人生って分からない
《生まれてくる赤ちゃんが男の子だと知ってとまどいを隠せない2人の記録の続きです・・。》
おそらく20分以上歩いて、ようやくとらやに着きました。
(写真は、とらや近くのコンコルド広場が見えてきた時に撮ったものです。
この日って本当はもう少しお天気よかったのですが・・・。)
着席してメニューを選んでしばらくしてから・・・つまり性別を教わってから30分ぐらいしてからようやく、私の気持ちも落ち着いてきたみたいです。
「本当にとまどっちゃうけど、でもこれもありかな」という気持ちが、ようやく湧いてきたから。
それから更に30分経つ間には「これでかえって良かったのかもしれない」と思える様になったのだけど、それはとんちんかんなディノのおかげでした。
だって彼、真面目な顔をしてこんな事を言うんだもん。
「あぁ・・・男の子だなんて、ぼくに育てられるのかなぁ」
「どうして?(この人って、女の子を育てるのが上手とも思えないんだけど??)
自分自身が男なんだし、アナタには2人も弟がいるんだし、大丈夫でしょ!」
「だってぼく・・・男の子相手に『父親としての威厳』を保てるかどうか心配なんだもん」
なんてこと!!
前々からこんな話を聞いた事はあったものの、やっぱり呆れてしまいます。
そんな私に、ディノはもっと情けない発言をしてきました。
「産まれてくるのが女の子だったなら、ぼくの立場も安泰だったのに」
「なんで?」
「だってそしたらぼく、『甘やかしっぱなしのパパ(=papa gateux)』に甘んじるつもりだったんだもん」
ま、なんて甘い考え!!
そんなのだめじゃん!!
実は前々から数知れぬ友人知人に指摘されてきた事なのだけど、もしも私達が女の子を授かったらディノはその子の前でメロメロに溶けて、自分の娘をわがままな子に育ててしまいそうな感じなのです。
そしてこの日この時のこの発言で改めて、本人もそう自覚している事が確認されてしまいました・・。
だからそんな彼には、男の子でちょうど良かったのかもしれない。
私にしたら「女の子がほしいと思っていたのに、未知の生物を授かってしまった」以外のなにでもない非常事態なんだけど、ね。
ところで私が
「あ〜あ、男の子の育て方なんて分からないよ」
と言うと、今後はディノが笑う番。
「『女の子の育て方なら知ってる』って言いたいの?」
「そうじゃないけど・・・私には妹が2人いるし、そのうちの1人とは8歳も離れているでしょう。
だから私は彼女の成長過程を一応見てきたワケ。
・・・自分が育てたんじゃないけどね」
そう・・・私は女の子の方が馴染みがあるとはいえ、自分で実際に女の子を育ててきた訳ではないのです。
女の子を授かっていたなら、「任せて!」という変な自信を持って暴走した恐れもゼロとは言い切れないし、手探りながらも男の子を真剣に育てた方がいいのかもしれない。
ま、「適度に」母親思いの優しい男の子を育てる様に頑張ってみるとしましょう。
(私をかなり癒してくれた、とらやの美味しいお茶とお菓子。)
その少しあとに私が、「これできっと本当によかったんだ」とまで思える様になったのも、ディノの一言のおかげです。
だってなんとあの彼が・・・
「『2人目』を考えてみるのも手かもしれないね」
と言ったんだもん!!!
ディノはこれまでいつも、「子供は1人がいい」と主張していました。
1人育てるだけでも色々な意味で大変なのに、それを2倍にするなんて無理と考えているみたい。
私がこれまで何度も「一人っ子は避けたい」と言ってきたもののほとんど効力がなかったので・・・いくら女の子が欲しくてたまらないからと言って、まさかあのディノが2人目を考える様になるとは思ってもみませんでした。
ディノが超・男系家族だから、もう1人子供を授かっても、また男の子かもしれない。
でもそれも悪くないな。
私にとっては少なくとも、「女の子1人だけ」よりは「男の子2人」の方が絶対に嬉しいもん。
(とらやを1時間ぐらいで出て、コンコルド広場に戻った時に撮影。
ちょうど夕暮れどきでした。)
それにしても、人生って分からない。
私は留学開始当初は「1・2年で日本に帰る」と心に決めていたのに、フランス人のディノと結婚する事にしたため、パリに留まる事が自動的に決まってしまいました。
それに将来の結婚相手は年齢の近い日本人だと思っていたのに、実際に結婚したのは思いっきり年の離れたフランス人。
今の生活は、かつての私の希望とは全くもって反対の方向に向かっている訳です。
しかもここに来て女の子ではなくて男の子を授かるとは・・・私の人生はどうしてこうもことごとく、予想(希望)からズレていくのでしょう。
でも今のところ、この人生けっこう気にいってます。
居住地がこの先延々とフランスなのだと思うと以前はイヤだったけど、今はこの国のいいところもたくさん目に入る様になってきたし、結婚相手も予想を大幅に超えた年上の外国人になってしまったけど、やっぱりディノで良かったしね。
だから赤ちゃんが生まれてきたら「男の子でよかった」・・・ううん、「この子でよかった」と本心から思えるようになるんじゃないかなぁ。
四半世紀以上に渡って「女の子がほしい」と思ってきた私の思想を完全に塗り替えるのはまだムリで、この後も全く葛藤がなかったと言えば嘘になるけれど。
(というか、こうやってぐちゃぐちゃ考えていられるのも今のうちだけだと思って開き直って、あえて悩んでいたりして。)
今回の件で、もしも私が日本で年齢の近い同国人と結婚して希望通り女の子を授かっていたなら、この同じ「私」の人生もかなり違うものになっていてその方が『楽』だったのかもしれないけど、今は『楽しい』この生活を大事にしようと思ったのでした。
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